ロボ、いいよね。
人間乗り込み型の巨大ロボ。
少年がある日おおきな武力を手にして、大人とぶつかりあって、死を乗り越えて、世界を救う少年少女が好きだ。
思春期で、ボーイ・ミーツ・ガールで、巨大ロボットで、海で、花火で、夏の終わりで。
セカイ系巨大ロボとボーイ・ミーツ・ガールが〜〜!!!!!!!!!
見たい〜〜〜!!!!!!!!!!!!
たとえば、そう、まだまだニヒルな笑みが似合わない中学生の男の子。両親は至って温厚で家庭環境に何の問題もなく育って、学業だって平々凡々で、今日は朝ご飯も朝のニュースも通学路のうるさい犬も全てが平凡で平和で、同級生たちの音楽の趣味にはついていけなくて、家も学校も退屈で、黒板よりも窓の外のグラウンドでバレーに弾む一年生女子の胸元を眺めていたくて、毛だって十分に生えてない。そんな男の子がいたとしよう。
まだ一日の授業は始まったばかりで、現国よりも体育のほうが似合いそうな教諭のはつらつとした声から逃げるように、クリアブルーの下敷きで首元を扇ぎながらグラウンド改め窓の外を見ていた自分にだけ、空が少し歪んでいることに気付く。
そこに何か、とてつもなく巨大なモノがいるぞ、と。
光学迷彩で透過されたナニカが、一年女子の日焼けを守るナニカがそこにいる。
少年はまだ幼さが残るとはいえ十四年の人生の中で現実というものを余すことなく教育されていて、陽炎を見間違えたのではないかと一度は自分を恥じるだろう。まだ暑さが始まったばかりの梅雨が明け切らない初夏の朝だって、陽炎くらい揺らめくだろうと。
自嘲の笑みを浮かべる自分に浸りながら黒板に向き直ったその時、少年はかすかに地鳴りを感じる。窓に視線を戻したとき、確かにそこに、空の中、透明の中に揺らぎがあった。目が合った、と思った。違和感が現実を侵食したことにやっと気付く。次に目を逸らしたら、まばたき一つでもしたらこの非日常が日常に溶けてしまう予感がする。あれだけ耳障りだった教諭の声はもう聞こえない。静かな地鳴りと共にゆっくりと移動してきた非日常はもう校舎の真横で、窓から吹く風はいつの間にか消えていて、3階の2年C組窓際で前から5番目の席の真横で、空間を切り開くように小さなハッチが開く。その中から現れたのは、
ばこんっ、と、乱暴な衝撃に少年は現実に戻される。いつの間にか真横で現国教諭が丸めた教科書を構えていて、そこからの現国は残りの授業時間めいっぱいを使ったお説教ショータイムとなった。
休憩時間にどれだけ窓の外に目を凝らしても非日常はもう見当たらなくて、前の席にいるクラスメイトの悪友Aが一年女子の身体の発達について持論を繰り広げ始めて、悪友Bがそれに同調し、Cが好みのサイズを披露する前にその場を退散する。足は無意識に階段を下り、下駄箱に向かっていて、その途中の校長室からちょうど出てきた真新しい制服の少女と青年を目にするのだ。
転校生の少女は、今日は学校見学に訪れただけで、夏をまたいで2学期からご学友になるらしい。イエノツゴーで今日から越してきたのだ、と、無口な少女を代弁するように青年が語る。 まるで台本を読み聞かせるようなイントネーションだな、と思った。なぜそれを自分が聞かされているのかもわからなかった。空調がいやに冷たい、ケーブルがそこらじゅうに生えたコクピットの中だった。
それが表向きの設定だ、と青年は続ける。どうやら自分は第一目撃者というやつになってしまったらしい。少女は光学迷彩巨大透明物体の操縦者で、未確認知的生命物体との戦争に身を投じていて、やっと一段落した今、外の世界を知らない少女が報奨としてねだったものが一年間の休暇、バカンス、田舎の日常、すなわち下見に来た見知らぬ土地で不運にも最初に目が合ってしまった自分と同じ串枝市立第三中学校2年C組の生徒となる、ということらしかった。
コイツに気付いてたろ、と青年は笑う。バレたなら巻き込んでしまえ、という楽観的な考えで、自分には彼女の生活面の面倒を見てやれ、と頼んできた。守秘義務とか国家機密とかないのかよ、問題だろ、自分はただの田舎の平凡な一般市民だぞ。そういう疑問は青年のスーツのジャケットに浮く硬質なふくらみを前に黙る他なかった。きっと選ばれた理由などなく、誰でも良かったのだ。田舎の平凡な一般市民などいつでも消せるのだと、最初から断る権利など自分にはないのだと、少年は思い知らされた。
光学迷彩巨大透明物体はその名をスズという。もちろん正式名称などではなく、コードネームだとか愛称のようなものだと思う。スズ。錫。ブリキ。オズの魔法使いのブリキの木こりは心を持たないことを嘆いていたっけ。それじゃあ青年はオズで、少女はドロシーだろうか。少年は安直なネーミングだと内心で自嘲する。
スズは少女の専用機であるという。メイン・パイロットこそ少女ではあるが青年もスズを操縦することができるらしく、普段は後方支援(バックアップ)の任に就いているが今回はセカンド・パイロットとして彼女のバカンスに同行していると語った。その口ぶりは機械的で、監視のために彼女に同行している、という説明の方が似合いそうだ。
どうだ、任命されてくれるか?青年は少年に問う。断る選択肢なんかないくせに、断った瞬間自分の眉間は銃口の硬さを知るのだろうに。それでも少年は内心の興奮を抑えきれない。答えなんか悩むまでもなかった。非日常が自分に訪れたのだと、退屈な毎日が今日から変わるのだと心が踊る。それでもそれを青年に悟られるのは間抜けだと思った。やれやれ面倒くさいなあ仕方無いなあというような顔を作ろうとして、
少女が口を開いた。「おねがい」。
染まった頬は答え以外のなんでもなく、少し困ったような顔のドロシー嬢と極悪魔法使いオズの大笑いの中で、哀れ少年はカカシとなることが決まったのだった。
どこか遠くでチャイムの音が聞こえた。
みたいなね。
みたいなくだりからはじまるアニメ第一話が、私は見たいんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ひと夏で!!!!!!!!!!
だんだんと少年は少女と打ち解けていって!!!!!!!!!!!!!
同級生に見つかっちゃって少女にも友達の輪ができたりなんかしてさ!!!!!!!!
ちょっと常識からズレた少女とその友人たちは平和な日々を送ってさ!!!!!!!
夏休みに入って少年が少女への恋を自覚しだすころに戦況がかわってさ!!!!!!!!!!!
少女は戦争に戻って!!!!!!!だんだん会える頻度が減っていって!!!!!!
会うたびに少女はどこかおかしくなってって!!!!!!
少年と青年が喧嘩して!!!!!!!!
友人たちの協力のもと子供の無謀さと無茶な計画で少女と青年の所属する組織に直談判にしてさ!!!!!!!
その日から少年は操縦訓練がはじまって!!!!!!!!!!!!
だんだん少女が戦ってたの相手は何者だったのかみたいなのが明らかになって!!!!!!!!
ロボの秘密とか所属組織とかも明らかになって!!!!!!!!!!!
久々に会った少女がね、銃もってんの。青年が持ってたやつにすごく似てるの。スカートの裾に血がついてるの。
(ここの解釈はネタバレされなくて、青年を殺して奪ったでもいいし、銃は所属組織の配給品で少女が敵じゃなくて人間を殺したでもいいやつ)
そんでもう人類は敗北したから。もうだめだから。今日は最後の夏休みだって、だから今日は何して遊ぶ?って少女はへたくそな笑顔を浮かべるんよ。
少年はやっとそこで勇気を出すんだよ。
少年はカカシじゃなくてライオンだったねっていうのはおいといて。
僕がついてるから君は負けないって、二人なら絶対大丈夫だからって、思いつく限りのいろんな言葉で少女を説得して、
当たりのアイスの棒をまだ引き換えてないからとか、あの日の水着は本当に似合ってたのに素直に言えなくてごめんとか、夏祭りの日にコクピットから見た花火がきれいだったとか、少ないながらもぜんぶの思い出で精一杯少女を口説いて、
だから一緒に生きようって、一緒に勝とうって、二人でスズに乗り込むの。
そんで友人たちが!!!!!二人を見送るわけ!!!!!!!!!
駄菓子屋のおばあちゃんとかもいるわけ!!!!!!!
2学期までには帰ってこいよ!!!!!!って!!!!!!!!
そうやって二人は飛び立つ。やつ。
が。
見たい〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
見たいんだ〜〜〜〜!〜!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!
見たい〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!
これロボものじゃなくてセカイ系やんけ。イリヤの空にめっちゃ影響受けてんな〜!
熱血パワフル努力友情勝利ロボアニメも見たいです。
よろしくお願いいたします。
おしまい。